貧乏花
ショッピングモールで前を歩く家族。
パパ、ママ、3才くらいの小さな女の子
ママは赤ちゃんを抱っこしている
幸せな家族の象徴のような姿だ。
小さな女の子が花を握りしめていた。
道端でも原っぱでもどこで咲いている薄いピンクの花。雑草だ。
それを数本、花束にして握りしめながら歩いてる。
その花は私が子供の頃、遊んだ帰りに母親にと摘んで帰った花だ。
もう40年以上も昔の話だ。
花はどんな花でもかわいくてどんな花でも綺麗だし、母親は花が大好きな人だから
きっと喜んでくれるはずだと思った。
正確に言えば、母親に喜んでほしかったのではない、私がほめられたかったのだった。
ちょっとしおれかけてたけど花は花だ、薄いピンクだしかわいい。
帰宅して
「おかあさん、お花とってきたよ!」
とその雑草の花を母親に差し出した。
多分相当なドヤ顔をしていたと思う。
すると母親は
「あらこれ貧乏花じゃないのー」と
笑った。
貧乏花と言われたことにも傷ついたが、笑われことにも傷ついた。
今でも覚えているくらいだから相当なトラウマだ。
そしてその貧乏花は1分も飾られることなく
たまたま目にしたゴミ箱に捨てられていた。
ほめられなかったことなんかどうでも良くて、何だかこの花を摘んで帰った自分を呪いたかった。
喜んでもらえるどころか、ほめられるどころか、まるで空回りな逆のことをしたのだった。ガッカリさせてしまったことを悔いた。
嘘でも「あら嬉しいわ」でも「ありがとう」でも1分でも飾ってくれるような母親ではなかった。
母親も苦労してきたのだ、それは分かる。
けど子供にはわからない。
だから私は母親とうまくいかないのだ。
ショッピングモールで見かけた小さな女の子の摘んだ花もきっと
きっとママのためだと思うから飾ってあげてほしいなと思う。
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